病気を抱える子どもの相談は誰にすればよいのでしょうか。
病院の先生?それとも学校の先生?
実は社会福祉の専門職である「ソーシャルワーカー」は、病気療養児や難病児、医療的ケア児についての相談にも乗ってくれるのです。ソーシャルワーカーは相談に乗ってくれるだけではなく、関係機関への橋渡しもしてくれます。この記事では、ソーシャルワーカーが活躍している分野や、病気を抱える子どもたちを支援している場面などについても解説しています。
ソーシャルワーカーとは
ソーシャルワーカーとは、障害や病気などによって生活に困難や支障を抱えている方やその家族が抱えている問題を、解決に向けて社会福祉的に支援をする専門職です。活躍分野はとても幅広く、高齢者や障害者、児童などの福祉分野のほかに、教育や医療、更生保護の分野にも広がっています。
ソーシャルワーカーは総称であり、各職場では医療相談員や相談支援専門員などと異なった名称で呼ばれています。また、ソーシャルワーカーとして働くための資格は必要としませんが、以下のような資格を保持している方が多くいます。
- 社会福祉士
- 精神保健福祉士
- 社会福祉主事任用資格
なお、令和6(2024)年からスタートする子ども家庭福祉 分野の資格が、「こども家庭ソーシャルワーカー」です。子ども家庭福祉分野では今まで確固たる資格が存在しなかったため、活躍が大いに期待されています。
ソーシャルワーカーは様々な分野で活躍している
ソーシャルワーカーは、様々な分野で生活に困難や支障を抱えている方を支援しています。ここではソーシャルワーカーが活躍している代表的な3分野(保健医療分野、障害福祉・児童福祉分野、高齢者福祉分野)と職種名、その役割について解説します。
医療機関の医療ソーシャルワーカー(MSW)
医療ソーシャルワーカーとは、保健医療分野において患者やその家族が抱える問題を解決に向けて支援する専門職です。英語表記の「Medical Social Worker」の頭文字から取ったMSWという略語や、医療相談員などと呼ばれています。
医療ソーシャルワーカーの役割は、患者が抱える保健医療分野の特有な心理的・経済的・社会的問題の解決に向けた支援や、社会復帰へのサポートです。
具体的な仕事内容は以下のとおりです。
- 療養中の心理的・社会的問題の解決、調整援助
- 退院援助
- 社会復帰援助
- 受診・受療援助
- 経済的問題の解決、調整援助
- 地域活動
地域活動は意外に感じるかもしれませんが、患者にあった医療サービスを提供していくためにも、地域の関係機関との連携が必要です。家族会やボランティア団体などが活動しやすくなるように、関係団体の育成や支援なども行っています。
障害者福祉・児童福祉の相談支援専門員
相談支援専門員とは、障害者総合支援法・児童福祉法にもとづくサービスを利用する際の支援計画を作成する専門職です。支援計画は、障害者・障害児が同法のサービスを利用する際に必ず作成しなければなりません。
相談支援専門員の役割は、同プランの作成を通して障害者・障害児が人間らしい日常生活や社会生活を過ごせるようにすることです。
具体的な仕事内容は以下のとおりです。
- 障害者・障害児やその家族の困りごとの相談支援
- 支援計画の作成
- サービス事業者との連絡・調整
- 継続的なヒアリング
支援計画の作成が主な仕事ですが、相談やヒアリングも重要です。相談支援やヒアリングのスキルは相談支援専門員が必ず持っているスキルと言えます。
地域包括支援センターの社会福祉士
地域包括支援センターの社会福祉士とは、保健師や主任介護支援専門員とともに住民からの相談対応や権利擁護などを行う専門職です。社会福祉士は、「社会福祉士及び介護福祉士法」に定められている社会福祉の国家資格で、職種名として扱われることは多くありません。
ただ、地域包括支援センターにおいては、社会福祉士の資格保持者が社会福祉士という職種名で勤務します。地域包括支援センターの社会福祉士の役割は、保健師や主任介護支援専門と協力し、専門分野である権利擁護や虐待対応を中心に業務にあたることです。
具体的な仕事内容は以下のとおりです。
- 介護予防ケアマネジメント
- 総合相談支援
- 権利擁護
- 包括的・継続的ケアマネジメント
意外に思われるかもしれませんが、社会福祉士はケアマネジャーのようにサービスの利用のための計画作成(ケアプラン)も行います。
ソーシャルワーカーが病気を抱える子どもを支援する場面
ソーシャルワーカーは保健医療分野、障害福祉・児童福祉分野、高齢者福祉分野などで活躍していますが、病気療養児・難病児の支援もしています。ここではソーシャルワーカーが病気を抱える子どもたちを支援する場面について解説します。
医療機関での場面
入院や通院をする子どもやその家族が抱えている問題の解決のために、医療ソーシャルワーカーが支援をします。
似たような職種に心の問題の専門家であるカウンセラーがいますが、医療ソーシャルワーカーは問題に対して環境面の調整で対応することが大きな違いです。必要な制度やサービスを利用できるようにサポートし、困りごとの少ない環境を整える役割があります。
訪問診療・訪問看護のサービス利用時
医療ソーシャルワーカーは、訪問診療や訪問看護を利用している子どもたちやその家族の相談にも対応します。また、訪問診療や訪問看護の相談に対応するだけではなく、必要に応じて医師や看護師と同行訪問し、抱えている問題のヒアリングも行います。
相談対応やヒアリング をすることで、困りごとを少なくし自宅での日常生活をより良いものにするのです。
学校での場面
学校生活ではスクールソーシャルワーカー(SSW)が子どもたちの支援をします。スクールソーシャルワーカーは、教員と連携し児童生徒の困りごとの解決に向けた支援をする専門職です。
いじめや虐待などの問題のほかに、病気を抱える子どもたちが学校生活を過ごしやすいように、環境整備や関係機関との連携も行います。病気を抱えながら学校生活を送る子どもたちにとって、頼りになる存在と言えます。
家庭での場面
スクールソーシャルワーカーの活動は学校内にとどまりません。病気で通学が難しい児童生徒の家庭訪問もします。スクールソーシャルワーカーは、子どもが抱える病気や子どもの自宅の状況を理解し、一人ひとりにあった支援をします。
また、現代は技術の発達によりオンラインによる学習も珍しくなくなり、「通学できない=授業に参加できない」という時代ではなくなりました。このオンラインの活用も、スクールソーシャルワーカーの支援方法の一つと言えます。
医療的ケア児の日常生活
ソーシャルワーカーは医療的ケア児も支援しています。医療的ケア児とは、生活においてつねに医療的ケアを受けることが必要な児童生徒で、「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」 で定義づけられています。
医療的ケア児の支援においても、保健医療では医療ソーシャルワーカー、学校生活ではスクールソーシャルワーカーと、様々な分野のソーシャルワーカーがかかわっていることに変わりはありません。様々な分野のソーシャルワーカーの支援によって、医療的ケア児は安心して日常生活を過ごせるのです。
ソーシャルワーカーは子どもや家族にとって頼りになる存在である
ソーシャルワーカーは、病気を抱える子どもや家族にとって頼りになる存在です。様々な分野で活躍しており、子どもたちは日常生活・社会生活で支援を受けられるからです。
どのような場所の困りごとでも医療機関や学校にはソーシャルワーカーがいて、子どもたちの相談に乗ってくれます。困りごとを子ども やその家族だけで抱え込む必要はありません。
あなたの身近にはきっと頼りになるソーシャルワーカーがいます。どのような些細なことでも遠慮せずに相談してみましょう。
勉強も遊びも諦めないためにソーシャルワーカーに相談しよう!
私たちのまわりにいる頼りになる存在がソーシャルワーカーです。
医療機関や学校などの様々な場面にソーシャルワーカーがいて、私たちの困りごとの相談に乗ってくれます。病気を抱える子どもやその家族の相談にも、分け隔てなく相談に乗ってくれます。
「病気を抱えているから」と、勉強や遊びを子どもたちは諦める必要はありません。困ったことがあれば、ソーシャルワーカーに相談し解決に向けてともに取り組みましょう。