病気療養児の復学後、彼らの周りの人々は、学校生活でどんなことに注意したら良いのでしょうか?
本記事では、病気療養児が復学後に注意すべき5つのことや実例をご紹介します。病気療養児をサポートする際の参考にしていただけると幸いです。
病気療養児の復学に関する現状
病気療養児は、長期入院していた場合も多く、復学前からさまざまな心理社会的な困難を抱えている可能性があります。
例えば、
- 自らの成長・発達への不安
- 学習の遅れに対する不安
- 将来への不安
- 自分の居場所がなくなってしまう不安
などの不安です。周囲の人々は、病気療養児が抱える上記のような不安を軽減し、円滑な学校生活への復帰をサポートする必要があります。
では、彼らが円滑に復学後の生活をするためにはどんなことに気をつけたらいいのか?
ここから詳しく解説していきます。
参考:病気療養する子どもの復学時の不安軽減のための支援システムの検討
復学直後に気をつけたいこと
復学直後である登校初日には、病気療養児はとても緊張していると考えられます。そのため、自然とクラスの中に入れるような工夫が必要です。例えば、お帰りなさいの会をする方法があります。会を設けない場合でも、みんな笑顔で迎え入れるようにしましょう。
見た目に変化がある場合は、本人や保護者に相談して、事前にクラスメイトに説明しておくと、復学当日に安心して迎え入れられます。
参考:病気療養児支援ガイドブック(岡山県教育委員会)
復学後に気をつける5つのこと
復学後に気をつけたいことは、以下の5つです。
- 徐々に通学できるように配慮する
- 子どもが自信を取り戻せるような工夫をする
- 学校全体の理解を促す
- 教員が病院と連携できる体制を作る
- 病院と学校で定期的に情報共有をする
それぞれのポイントを下記で解説します。
徐々に通学できるように配慮する
復学後は、病気療養児が徐々に通学できるよう配慮しましょう。病気療養児の病気の内容・体力面・精神面などから、はじめから全ての授業に出席することが難しい場合があります。
最初は短い時間で授業や学校活動に参加し、様子を見ながら時間を延ばしていくのが良いでしょう。
また、病気の状態によっては、朝早い時間帯の通学が負担になる場合もあるため、1限目は無理をせず、2限目からゆっくり出席できる配慮も必要になります。
子どもが自信を取り戻せるような工夫をする
復学後の病気療養児は、心理面でのさまざまな不安を感じています。そのため、本人がクラスの一員だと感じられて、自信を持てるような工夫が必要です。
例えば、体力が低下している場合は、学校行事や委員会活動などで本人ができる範囲内で役割を決めて参加するのが良いでしょう。
学校全体の理解を促す
病気療養児が復学後に円滑な学校生活を送るためには、学校全体の理解が必要です。クラスメイトはもちろん、他のクラスの教員・生徒・保護者に病気療養児への理解も促しましょう。
ただし、伝える内容は、病気療養児本人とその保護者の意向に沿う形にするよう、気をつける必要があります。復学前に、本人・保護者と相談する機会を設け、学校として皆にどう伝えるかを事前に決めておきましょう。
教職員が病院と連携できる体制を作る
必要に応じて、病気療養児が入院していた病院に学校側から連絡できるよう、本人・保護者に許可をとっておきましょう。教員が病気療養児の外来受診時に同行すると、担当医とも顔見知りになり、より連携を取りやすくなります。
病院と学校で定期的に情報共有をする
相談したいことがあっても保護者の方が学校や病院に、どのように相談したらよいか、誰に相談したらよいか分からず困っている場合もあります。
情報共有がうまくできないと、病気療養児のサポートを円滑にできないため、病院と学校で定期的に情報共有する機会を設けましょう。保護者が安心するような関わり方を目指すのがポイントです。
参考:病気療養児支援ガイドブック(岡山県教育委員会)
学校全体への理解啓発の方法
以下では、学校全体への病気療養児に関する理解啓発の方法を解説します。
学校全体への理解啓発方法
学校全体への理解啓発の方法は以下の通りです。
- 学校全体で共通理解を図る
- 感染予防体制を作る
- 必要に応じて施設面での支援をする
学校全体で共通理解を図る
まずは学校全体で、病気療養児に関する共通理解を図ることが重要です。ただし、本人や保護者の意向に沿った内容にとどめましょう。
共通理解を図るためのポイントは以下の3つです。
- 病気療養児の入院時から、職員会議で本人の様子や病気の経過などを情報共有する
- 病気療養児の見た目に変化がある場合の配慮事項を決める
- 学校全体への情報開示方法を事前に決めておく
以上のポイントを押さえて、学校全体への共通理解を図りましょう。
感染予防体制を作る
病気療養児の理解を促すとともに、学校内での感染予防体制も作りましょう。感染症に罹患すると重症化する可能性を持つ病気療養児もいます。その場合は、保護者と学校内での感染状況をこまめに共有し、登校するタイミングを相談しましょう。
必要に応じて施設面での支援をする
必要に応じて学校の施設面での支援を行う必要もあります。
例えば、病気療養児に体力がない場合は以下のような設備が必要です。
- 洋式トイレ
- 手すり
- 扇風機やエアコンなどの空調設備
上記が学校の設備として整っていなければ、病気療養児の復学を想定して早めに対策する必要があります。また、病気療養児が通う教室の階数も検討事項です。
本人の体力を考慮して、教室の場所が上層階にある場合は、1階や低層階への変更が必要かを相談しましょう。
在籍児童・生徒への理解啓発方法
在籍児童・生徒への理解啓発の方法は以下の通りです。
入院・退院時に説明する
在籍児童へは、病気療養児のことを入院・退院時に説明しましょう。本人や保護者には、在籍児童に伝えたいことを事前にヒアリングしておくと良いです。
退院前に病気療養児との関わり方を話し合う
病気療養児が退院する前に、病気療養児との関わり方を在籍児童と話し合っておくことも必要です。本人は、必要以上に特別扱いしてほしくないと思っている場合も多いので、どんな心境でいるかを皆が想像できる機会を設けましょう。
参考:病気療養児支援ガイドブック(岡山県教育委員会)
復学後の実例
事例(小学校での実践例)
Aさん:小学校2年生まで白血病を患い、1年間入院加療。小学校3年生で復学する。
一人で悩まずに、私たちにご相談ください
病気療養児の復学後の学校生活で注意するべきことや、学校全体への理解啓発の方法などをご紹介しました。配慮すべき事項はたくさんありますが、学校全体で協力しながら、彼らをサポートしていく必要があります。
そうは言っても、前例がなかったり病気療養児の担任になるのが初めてだったりする場合は、思った通りにいかないことも多いかもしれません。
そんなときには一人で悩まずに、ぜひ私たちにご相談ください。
私たちNPO法人ポケットサポートは、岡山県教育委員会や各地域の保健所と連携しながら多職種連携で復学支援に取り組んでいます。病気療養児のサポートの仕方がわからない・一人で抱え込んでしまってうまくいかないなどとお悩みの場合は、いつでもご連絡お待ちしています。