『院内学級』と聞いて、皆さんはどんなイメージを思い浮かべますか?
「病院の中にあって、小学生や中学生が勉強する場所でしょ。自習室みたいな感じ?」
「そもそも入院中なのに勉強とかできるの?」
「院内学級?それ何??」
はいはい、いろんな声が聞こえてきそうです。
確かに、病気や怪我で入院している子どもたちが、教室で授業を受けているというイメージはなかなか湧いてこないですよね。
でも『院内学級』は小さくても、病院の中にある正式な学校なんです。
学校ですから担任の先生もいますし、クラスメイトもいます。(入院の時期によっては生徒が一人というときもありますが)
教科の授業だけでなく、始業式や終業式、学習発表会や遠足のような学校行事も行っているんですよ。
今回は、ポケットサポートスタッフで元院内学級担任のNが院内学級(中学校)のリアルな一日をご紹介しましょう。
院内学級の教室は午前9時から始まります。担任の先生は勤務先の中学校の職員朝礼を終えてから、その時間までに病院に向かいます。それぞれの病棟、病室から小児科病棟の端にある院内学級の教室へ、生徒たちは通学(!)してきます。
気持ちを切り替えるために、原則パジャマのままでの登校はひかえてもらっています。
トレーナーやTシャツなど動きやすい服装で来る生徒が多いですが、なかには生活のリズムが作りやすいからという理由でわざわざ学校の制服を着て来る子もいるんですよ。意外でしたか?
もちろん骨折や点滴の関係で着替えがしにくい場合には、パジャマのままでOKです。担任の先生は、その日の体調や気分、そして検査や治療で抜ける時間の有無を確認します。隣の部屋は院内学級の小学校の教室です。朝の会で歌う今月の歌の可愛い歌声が聞こえてきます。
個室の病室を2部屋合わせたくらいの広さの教室は、壁面にホワイトボードが設置され、学校で使われているのと同じ生徒机と椅子が5〜6組置かれています。棚には各学年の教科書やプリント類、CDデッキや顕微鏡、ミシン等々、いろいろな備品が並んでいます。コンパクトにまとまっているんですよ。
着席している生徒の出身校も学年も様々なのが、院内学級ならではでしょうか。
複式学級となりますから、生徒ごとに時間割も異なります。数学の問題を解いている生徒の横で、美術の課題のポスターの下書きをしている生徒もいます。使っている教科書も出身校ごとに違うので、担任の先生は、一人ひとりの取り組みを見守りながら、質問に答えたり、その生徒の出身校から送られてきた進度表を確認したりしながら、学習をサポートします。
点滴の終わりを告げるブザーが鳴ったら、急いでナースコールをすることも。教室に看護師さんがやってきて処置してくださいます。生徒本人が希望すれば、定期考査や漢字検定も受験可能です。
時には、3年生の先輩が1年生に勉強を教えてくれることもありますし、家庭科の授業の一環で、全員で調理実習をすることもあります。もちろん入院中の生徒たちなので、理科の実験や調理実習、体育をする場合には主治医と保護者の方に許可を事前にいただいておくことも必要ですね。
院内学級の授業ではチャイムが鳴りません。生徒のその日の体調に合わせて学習を進めます。短時間で休憩を入れて気持ちを切り替える生徒もいれば、1時間以上課題に取り組んで、学習内容を定着させようとする生徒もいます。
どの生徒もまじめに取り組んでいますが、頑張りすぎて無理をさせないように、担任の先生は生徒の様子を見守ります。普段は担任の先生が9教科を教えますが、中学校は教科担任制なので、週に何度かいろいろな教科の先生が本校から授業に来てくれます。月に一度は外国語指導助手の外国人の先生も来てくれて、英会話の授業を楽しみます。
午前中の授業は12時前には終了です。
いかがでしたか?意外に『院内学級』って学校なんだな〜って思っていただけたでしょうか?
もちろん地域によって、運営方法や設備の違いもあるとは思いますが、『院内学級』は病院の中に病院ではない風を吹かせているのは間違いないと思っています。
次回は、『院内学級』の午後の授業の様子や取り組んでいる行事についてご紹介しますね。