院内学級ってどんなイメージ?リアルな午後の学級の様子

コラム

『院内学級』と聞いて、皆さんはどんなイメージを思い浮かべますか?

「病院の中にあるから、病院で運営してるのかなあ?」
「院内学級の先生って資格が必要なの?」
「院内学級?それって本当の学校じゃないよね?」

はいはい、今回もいろんな声が聞こえてきましたね。前回の「ある院内学級の一日 其の一」で、『院内学級』は小さくても、病院の中にある正式な学校であることをお話ししました。

病気や怪我で入院した子どもたちを対象にしたクラスの俗称が『院内学級』で、正式には『病弱・身体虚弱特別支援学級』という病院内に設置された特別支援学級という位置づけになります。

そのため入院中の小学生や中学生が院内学級に入級するためには、一時的ではありますが入院前に所属していた小学校や中学校から、その病院の学区内にある公立の小学校や中学校へ転校手続きが必要です。

「転校」と聞くと、なんだか大変!というイメージを持たれがちです。

しかし書類上で学籍の異動が行われるだけで、学習内容はもともと通っていた学校のものを引き続き実施しますし、入級前の担任の先生と院内学級の担任の先生が連携を取りながら学習や学校の行事関係を進めていきますから、しっかりサポートできるようになっています。

心配はいりませんよ。

院内学級に通って勉強すれば、入院中でもちゃんと出席扱いとなり、進学に向けて欠席が増えていくのを気にしている中学生や保護者の方の不安が和らぐこともあるようです。
院内学級の担任は、設置病院の学区にある公立の小学校や中学校に所属している先生が担当します。

今回も、ポケットサポートスタッフで元院内学級担任のNが院内学級(中学校)のリアルな午後の学級の様子をご紹介しましょう。

午前中の授業が12時前に終わってから、少し長めの昼食と昼休みに入ります。それぞれの病室で昼食を食べてもいいし、教室に御膳を運んできて担任の先生やクラスの友達と一緒に食べることもできます。

食欲のない子も、みんなと一緒だと食べられる気分になるときがあります。

小学生は教室まで来て、先生や付き添いの保護者の方と一緒に食べることが多いですね。中学生は病室で個々に食事をしてのんびり過ごすほうが多いです。昼休みの間に検査やリハビリで呼ばれることもあるようですが、13時30分始まりの授業に間に合うように病院のスタッフの方々も協力してくださいます。

担任の先生は長めの昼休みの間に、教室に来ることのできない子どもたちの病室に出向きベッドサイド学習をしたり、クラスの子どもたちの前籍校の担任の先生に連絡を取ったり、子どもたちの主治医や担当看護師、付き添いの保護者の方と情報交換をしたり、結構慌ただしく過ごしています。

13時30分になると子どもたちが教室にやって来ます。午後の授業は実技教科を当てることが多いですね。美術や技術・家庭の課題に取り組んだり、楽器に挑戦したり、理科の実験をしたりすることもあります。

定期考査が近いときは追い込みの試験勉強になるときもあります。コロナ禍の間はできませんでしたが、調理実習もしましたね。

小学生に人気のメニューはポップコーン作り。中学生に人気のメニューはたこ焼き。退院前のお楽しみ会で、一番リクエストが多かったのはたこ焼きパーティーでした。(ただし食事制限がある子がいたら配慮は必要です)

その他にも週に一度、大学生の訪問ボランティアがあり、年の近いお兄さんやお姉さんとボードゲームやトランプで盛り上がる時間も、子どもたちは楽しみにしています。

個人でやるゲームやYouTube視聴も楽しいけれど、対面でワイワイ言いながら過ごす時間は入院中の子どもたちにとってかけがえのない時間になっています。

14時30分で一旦授業は終了ですが、希望する生徒は教室に残っても構いません。勉強の続きをしたり、友達とおしゃべりをしたり、キーボードを演奏したり、アイロンビーズで小物を作ったり、過ごし方は自由です。

担任の先生は、その空間で一緒に過ごしています。基本は見守りながら、というスタンスですが、楽しそうなおしゃべりに引き込まれて一緒にあれこれ話しこむこともあります。真面目に進路相談になることもあります。

かわいいアイロンビーズのデザインを教えてもらって一緒に小物作りをしたり、UNOで盛り上がったり。生徒と過ごす、まったりとした時間は院内学級の担任にとって至福のひとときです。

また院内学級の行事として、遠足があります。遠足と言っても病院の敷地内にある医学博物館へのお出かけですが…。博物館内を謎解きシート片手に楽しく見学した後は、お弁当タイムを過ごします。

病院の栄養部の方々が協力してくださって、遠足の日は院内学級の子どもたちだけのスペシャルメニューのお弁当を用意してくださいます。子どもが喜びそうなおかず、かわいい三色おにぎり、カラフルな容器で、子どもたちの気分も上がります。

正式な学校なので、節目の行事もあります。始業式や終業式も学区の小学校、中学校から校長先生、教務の先生、病院からは院長先生、小児科のドクター、看護師さんも集まってくださってプレイルームで行います。

毎回優しい笑顔で心温まるお話をしてくださる院長先生を始め、忙しい中いろいろな立場の方々が院内学級の子どもたちのために式を盛り上げてくださいます。子どもたちの保護者の方も感動しておられました。

いかがでしたか?

地域や病院によって院内学級のスタイルは様々ですから、ここで紹介した内容がすべてにおいて当てはまるわけではありません。しかし、入院中の子どもたちに「学校の風」を届けようという気持ちは、どこの院内学級も一緒だと思います。

病気の子どもたちに何ができるか、これからも思いを込めて取り組んでいきたいと思っています。

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