今回は、ポケットサポートの支援活動の中で、病気を抱える子どもたちが教えてくれた「大切なこと」の一つを実話から紹介したいと思います。最後までご覧いただき、タカヒロくん(仮名)が教えてくれたメッセージを皆さんも受け取って頂ければ嬉しいです。
タカヒロくんとの出会い
タカヒロくん(仮名)は中学2年生のときに、小児がんを発症しました。
とても難しい年頃で、長期入院がはじまった当初は、周囲の言葉にあまり声を傾けずいました。とにかく、治療の不安や辛さをテレビをみたり、ゲームをすることで紛らわせる毎日でした。
タカヒロくんの入院していた病院には院内学級(入院中の子どもが通うことのできる学校)がありました。しかし、「院内学級なんて行く気にならん」と、聞く耳も持たない様子でした。
入院当初、特に思春期の頃に発症した子は、自分が病気であることを受け入れられなかったり、今までの生活とのギャップに苦しんだり、将来への不安が募ったりする等の困難が多くあります。
タカヒロくんもその一人でした。
お母さんはタカヒロくんに付き添い入院をしていたので、お父さんときょうだいはお家で過ごしていました。きょうだいがお見舞いに来ても、未就学のため病室へ入ることは許されませんでした。(小児病棟は感染症対策のため、18歳未満の子どもの入院病棟へ入ることを許されないことが多くあります。)
院内学級が入院中の居場所になる
ある日、院内学級へ通う隣のベッドの子どものところにやってきたのが、ポケットサポート代表理事の三好でした。そのときの様子はとてもよく覚えていて、雑談をする楽しい声や、勉強をしたりする様子がわかりました。
少しずつその会話に入っていったことがきっかけで、「院内学級行ってみようかな」という一言から、タカヒロくんも通うようになりました。
その当時の院内学級(中学部)は男子ばかり。同じように慢性疾患などで入院している「仲間」たちがそこでできました。友情を育むのに時間はそんなにかかりませんでした。
院内学級で勉強をしたり、休み時間には毎日のようにトランプの大富豪で対決したり。卓球の強い子が入級してきてからは、体育の時間は卓球一色でした。
そこはタカヒロくんたち、入院している子どもたちにとっての「学校」であり、大切な「居場所」となりました。
ただ、治療は厳しく、吐き気や倦怠感、痛みを伴うものもありました。気持ち悪くてご飯が食べられないときや、治療の一環で病室のベッドの外へ動けないこともありました。
そんなときでも、入院中の「仲間」と過ごす時間は、タカヒロくんにとって勇気をもらえ、院内学級にいる間は、病気であることの不安から離れることができ、1人の「中学生」として過ごすことができるものになっていきました。
少々体調が悪くても、院内学級へ行くことで元気になるくらい大切な場所だったとタカヒロくんは教えてくれました。
学ぶことが将来への希望につながる
たまに体調が安定しているときは自宅へ外泊を許されることもありました。そのときは思いっきり、きょうだいやお父さんとも遊ぶことができます。ただ、病院へ戻る前の日はいくら楽しそうに遊んでいても、再開される入院生活に家族みんなが不安になることがあったようです。
理系の科目が得意で好きなタカヒロくんの夢は元々「小児科医」になることでした。あるとき将来の夢が変わったことを教えてくれました。
「なあ、前は医者になることが夢だったんだけど、医者って俺みたいなこんなクソガキ相手にせんとアカンのよな?それは俺には難しそうだから、薬を開発する方になろうかな。父さんや母さんも薬関係の仕事しとるし。俺ら(の病気)に効くような新薬でも開発して一発大儲けしたい。うん。金持ちになりたい。」と教えてくれました。
初めは「院内学級なんて行く気にならん。」と行っていたタカヒロくんが、病院生活を通して新しい夢を持つことができるまでになりました。
院内学級が大好きで、一緒に入院していた「仲間」たちとも退院した後にも交流が続いています。家へ遊びに行ったり、ときには自宅へきたり。当時はまだNPO法人になる前のポケットサポートで支援を受けて、無事高校へ進学することもできました。
院内学級はパワースポット・笑顔になれる場所
再入院がきまったとき、院内学級には高校がないため通うことができませんでしたが、休み時間や放課後に覗いてくれたりしました。
「行く気にもならん」と言っていた彼からそのとき、周りの院内中学の後輩たちに出たのは「院内学級は俺のパワースポットだ!」という言葉でした。
同世代の友だちや、院内学級の先生、当時のポケサポ代表の三好などの出会いや交流を通じて、タカヒロくんの気持ちは未来に向かっていきました。
まとめ
タカヒロくんが教えてくれたこと、それは病気の自分ではなく学校で友達と一緒に勉強している自分に戻れる場所が「院内学級」であり、つらい闘病にも前向きになれるようパワーをためることができる空間だったのではないでしょうか。
元気だったら学校の友達と一緒に登校して部活や勉強をして、運動会や文化祭の準備をしたり…。そんな生活の中で子どもたちはたくさんのことを学び、感じて成長していきます。体の成長だけでなく、心の成長も必要だと思います。
命を救うことが最優先になる入院治療中ですが、子どもたちが退院した後の復学や将来のことも見据えて、地元の学校の先生や主治医の先生、地域の保健師、ポケットサポートのような支援者が、ネットワークを組んで支える仕組みづくりが求められていると感じます。
応援コメントをお待ちしています
タカヒロくんが病気を克服されたこと、良かったです。その中で、院内学級が、タカヒロくんの心のポケットに温かい仲間の存在や先輩の三好さんとの交流が入っていて、これからもタカヒロくんの支えになっていくだろうと感じました。
岡山在住ではないのですが、遠くから応援してますね。