ベネッセこども基金交流会の2日目は国立成育医療研究センターの敷地内に設営されている「もみじの家」の見学に伺いました。今回は施設の紹介とともにご紹介したいと思います。
医療型短期入所施設【もみじの家】とは
もみじの家は「重い病気のこどもと家族が笑顔になれるひとときを支えたい」というスローガンの元、作られた「医療型短期入所施設」です。マネージャーの内多さんは元アナウンサーで、声はもちろん思いや考えも素敵な方です。内多さんにお話を伺いながら、施設案内をしていただきました。
2階建の建物で、1階は日常生活サポートを行うところで、広くて清潔なフロアが広がっています。「お家と同じ感覚で動ける」子どもだけの入所も可能で、希望があれば親子でも入所できます。お部屋の特徴としては、子どもの部屋と壁を隔てた部屋にご家族が泊まれる形になっています。
成育医療研究センターの医療スタッフの方達が、診察からケアまで行うようになっていて、当日も物品の管理や整理、動きの確認などが行われていました。入所のタイミングで診察室へ行き、体調のてチェックを行います。兼任のドクターがケアの確認や全身の確認、治療が必要な場合は隣にある救急外来へ行くこともできます。もみじの家では積極的な治療は行いません。(熱発の対応くらいはするそうです。)
一緒に家族が泊まっても、ケアはスタッフの方が完全に行ってくれることで、医療的ケアが必要な子どもの家族にありがちな家族の睡眠不足を軽減でき、ゆっくり睡眠が取れ、日常の疲れを癒す、レスパイトケアが可能な形となっていました。
最初は家族での申し込みが多いんですよ。でもね、徐々に慣れてくると子どもだけ預けて家族はお出かけされたりするんです。子どもの側にいたいとか、外に出たいとか、選択できるっていうところが良いところだと思います。
リラックスできるお風呂が2種類
2つあるお風呂がとっても素晴らしいんです!
説明では伝わりづらい部分もありますが、ベッドに子どもを寝かせた状態から横へスライドさせると、浴槽が上がってくるというシステムになっています。子どもにとっても、上下運動がないことで不安がすくなくなることと、ケアにあたるスタッフも腰を屈めずに行えることで負担が少なくて済みます。
感染症対策のため、浴槽は使ったら洗浄するを繰り返すため、入所の子どもさんは2日に1日程度しか入浴できないそうです。
もう一つあるお風呂は温泉っぽいところ、ここはご家族に人気スポットだそうです。ジャグジーも完備(だけど、内多さんは使ったことがない)でお母さんがのんびり入ったりされるそうです。お風呂のすぐ側にはコインランドリーも完備。
家族でも安心して利用できる設備が充実
共用のダイニングキッチンもあり、何もかも揃っているシステムキッチンもありました。
作って食べても、買ってきて食べても良いし、外に出て食べに行ってくれてもいいんです。これも選択できるっていうところが良いわけです。
とても印象的だったのは、壁に飾られてあるご家族の写真がみんな笑顔だったこと。ぎゅーっと抱きしめていたり、頬や体に寄り添う写真は温かさをとても感じるものばかりでした。
セミプロのカメラマンさんも入ってくださっているんです。
家族写真は希望者にはアルバムにしてプレゼントするんですよ。
このフロアは「病棟」という形をとっているため、通し番号もあるのですが、部屋の名前=番号とするなど、病院っぽさを出さない工夫が満載でした。
きょうだい児も利用できる多様な体験交流プログラム
2階は様々なプログラムを行ったり、会議室などもあるフロアです。
職員の方は、看護師さんが15名、保育士さんが2名と、介護福祉士さんが1名。平日は毎日保育の時間が行われ、午前中に1時間のプログラムが開催されます。普段なかなか一緒に活動できない、きょうだい児もプログラムに参加できるということも特徴のひとつのようです。
短期入所には保育の(医療)加算はないんです。ですが、こういう保育プログラムがあることで保護者の方も安心して預けていただけます。児童発達支援は通所でできるようになると良いと思います。
しかし制度にならないからお金にならないんです。こういうところにお金がつかなければ、持ち出しになって持続可能にならない。寄付で賄われているんです。赤字が恒常化する形では、いくら大切だと思っていても広がっていかないですよね。制度によって収支が安定すると、他の医療機関や民間でも作れるようになると思います。だから、私たちは一緒になって声をあげていかなければならないんです。
利用者が増えてきたことで少しずつ赤字は解消できているそうですが、障害福祉サービスの改定が起こるとがらっと変わる収支。
医療型短期入所は同じような課題を抱えています。顔合わせをして、ひとりの声でなく、みんなの声として集約していくことが大事なんです。これから国も調査が始まります。何らかの制度改正を考えているのではと思っています。
現場の声で制度の後押しをしていくんだという、強い思いを感じました。
2階のところでお気に入りだったのは「センサリールーム」という場所。動いたり、ボタンを押すと光が変わったり、ヒーリングの音楽が流れていて、五感を刺激する仕掛けが満載。ウォーターベッドは大人気で、平衡感覚を養うこともできるそう。冬場は冷たくないように温水仕様になったりと素晴らしい配慮。
(代表の三好は他の見学参加者たちから、「ウォーターベッドに寝転んだときに一番楽しそうでした!写真残しておけばよかった〜」と言われるくらいはしゃいでいたとか・・)
まとめ
とにかく清潔感と温かさに溢れる館内でした。一緒に見学をしていたチャイルドケモハウス代表の楠木先生が素晴らしいと、おっしゃるくらい本当に素晴らしい施設でした。
完璧なくらいのショートステイの施設。ここなら預けたいと思える。
病院は暗かったり、ショートステイも場所によっては古いところもあったりと、預ける方の親が罪悪感を感じることがある。病院側は預けられても、子どもが体調を崩したりする場合にトラブルになったりと、儲からない上にスタッフへの負担が大きいけど、もみじの家はそれがない。
うちにいるより、ここにいた方が良いと思える、それこそが素晴らしい。
ただ、これだけ人気の施設のため、新規入居は3年待ちなんだとか。成育医療研究センターにかかっていないお子さんが入れないことや、18歳までしか入居できないこと(制度上の課題)もあります。
もみじの家だけで医療的ケア児のショートステイの課題が賄いきれるわけはないので、地域への分散が必要になってきます。そうしなければ、医療的ケア児が安心して過ごせる地域も広がっていかないでしょう。また、内多さんがおっしゃっていたように、制度の充実が測れ、各地域の医療機関でも運営ができるようになっていくことが望まれます。
病院と違う「お家」という環境でお迎えのできる「もみじの家」。医療型短期入居施設には、ケアするスタッフの確保や、ボランティア、運営のための寄付など課題も多くありますが、広がっていくことを願っています。
見学させていただきました、もみじの家の関係者の方々、コーディネートくださったベネッセこども基金の方、そして2日間研修に参加したみなさん、心から感謝いたします。ありがとうございました。