令和元年度に国立がん研究センターが行った調査による「小児患者体験調査報告書」というデータが、2021年の3月に公開されました。
2014年及び2016年に18歳以下で小児がんに罹患された患者さんへの質問調査で、回答数が1221という大規模かつ、小児の調査では日本では初めて行われた質問も多くあります。その中の86頁から98頁に教育に関する項目がありましたので紹介します。調査の中には「がん」の3種類の分布も明記されていますがここでは割愛させていただきます。
就学支援制度の利用
転校・休学・退学を経験と回答した人の中で、治療中に何らかの就学支援制度を利用したと回答した割合が75.9%とのデータでした。
この中で「小学校」は約91%、「中学校」が約78%、「特別支援学校」が約67%の人が院内学級(特別支援学級や病室への訪問など)で授業を受けたとあります。
一方で、「高等学校」では「利用したものはない」という回答が約61%となっており、約6割の人が教育支援を全く受けていないことになります。(「大学」は「利用したものはない」が100%でした。)
復学の経験
先の調査の中で、復学を経験した人の割合(小学校、中学校、高等学校、大学)は約92%でした。それ以外が復学をしていないというデータでした。
復学を経験した人で、「学校・教育関係者や医療者からの配慮があった」と答えた人の割合は約92%で何らかの配慮を受けたことになります。
また、復学を経験していない人の理由として1番多かったのは「身体的に難しい(治療中で医師からの許可が出ていない、亡くなっている)」約63%で、次いで「患者の気持ちが復学に向かない」約23%、「学校側の協力が得られにくい」約3%でした。
教育支援に関する医療スタッフからの説明
治療を始める前に教育の支援などについて、病院のスタッフから話がありましたか?という質問に対して「あった」と回答した割合は約68%でした。
それ以外の「なかった」と回答されていた人の中で説明を必要としていたとした割合が約28%、説明を必要としていなかったという割合が約72%でした。
学校関係者への相談
学校の関係者に「がんと診断されたこと」を話しましたかの質問に対して、「はい」と答えた人の割合は約97%でした。誰に相談したかについて、一番多く回答されたのが「学校内の先生(担任や主任の先生・養護教諭・校長先生」約99%で、次いで「同級生の親(PTA含む)」、「同級生」がどちらも約21%、「教育委員会」が約3%でした。
相談した学校別の割合として、「小学校」「中学校」「高等学校」に関しては「学校内の先生」が100%だったのに対し、「大学」に関しては約57%となっており、小学校~高等学校に通っていた人は全て学校の先生に相談していたことがわかりました。
また、「同級生」に相談した割合が「小学校」13%、「中学校」約21%、「高等学校」約36%、「大学」約43%となっており、年齢が上がるほど、友達にも病気であることを話をしたり相談する割合が多くなっていることがわかりました。
がん治療と教育の両立
治療中に、学校や教育関係者から治療と教育を両方続けられるような配慮があった。という質問で「とてもそう思う、ある程度そう思う」と回答した人の割合は全体で約77%でした。
分布としては「小学校」約81%、「中学校」約81%、「高等学校」約66%、「特別支援学校」75%、「大学」約55%となっています。
さいごに
本調査は国立がん研究センターがん対策情報センターで、厚生労働省委託事業「がん対策評価事業」の一環として行われたものです。データの詳細やダウンロードは以下のURLから行うことができます。
このような調査が、これからの小児がんをはじめとする病気を抱える子どもたちの将来に役立つことを祈念して、こちらの報告書を元に記載させていただきました。