2022年2月にポケットサポート応援団の皆さんにWEBアンケート調査として、当団体に期待することや改善点などをお聞きした中から、次のような貴重なご意見(ご質問)をいただきました。回答にご協力いただきました皆様、ありがとうございました。
活動も充実されてきているようであり、各種補助金、助成金も順調に獲得されているように見受けています。ポケットサポートの活動の必要性については、充分認識はしておりますが、財政的に充実してきている所に対しての個人的な会費という形での支援は不要なのではないかと、最近は思い出しております。
会費の必要性があるようなら、「必要」という文字だけではなく、なぜ必要なのかも示していただければありがたいところです。
ポケットサポートとしても改めて病気を抱える子どもたちへの支援や活動資金の必要性を考え直し、どのように寄付者や支援者の皆様に分かりやすくお伝えすることができるか、考えをまとめるきっかけをいただきました。今回はポケットサポートの活動を安定的に継続するために、「どうして助成金や補助金だけで支援活動を運営できないのか」3つのポイントにまとめましたのでご覧ください。
活動資金として寄付金が必要不可欠な理由
ポケットサポートが小児がんや心臓病などの慢性疾病を抱える子どもたちの学習支援や交流支援活動を安定して継続的に実施するために、助成金や補助金以外に寄付金が必要不可欠な主な理由を3つに分けてご説明します。
助成金は申請採択方式であり収入源として不安定
上図の右グラフのように、皆様からご支援いただきました寄付金や助成金などは、小児がんや心臓病などの慢性疾病を抱える子どもたちの学習や復学支援、当事者によるピアサポート相談、夏祭りやクリスマス会などの相互合流イベント開催資金として60%を活用しています。また、医療機関や学校現場の先生方、教育委員会や保健所など様々な関係機関と連携した啓発活動や講演活動、そして地域支援ネットワーク拡充のために20%を活用しています。
2020年度は新型コロナウイルス感染症に伴う事業活動の中止や変更など、組織運営のために必要となる管理運営費(会計や人事労務、広報、カード決済手数料などの間接的な経費)として約20%が必要となりました。
コロナ禍という状況にもかかわらず、ポケットサポートの支援活動を継続することができたのは、年間で約390万円のご寄付を全国300名の方からご支援いただき、524枚もの寄付金受領証明書を発行することができたからです。
左グラフのように2020年の収益全体では、寄付・会費が32%、岡山市からの行政委託金が15%、民間等の助成金が50%という結果です。収益全体の50%を占める【助成金】収入がなければ、ポケットサポートの支援活動をコロナ禍という環境や、当事者家族の様々なニーズに合わせて拡大や発展はできなかったと感じています。
一方で、助成金の多くは単年度での申請となっており、助成団体として採択されることもあれば、残念ながら見送りになる場合もあります。また、助成財団によっては2年続けての申請ができない場合や、助成金額の割合が減少することもあります。
このように助成金収入はポケットサポートにとって必要不可欠ではありますが、申請による採択方式のため不採択になる可能性もあり、収入源としては不安定になっています。
これらの理由からポケットサポートでは助成金の申請を行い、環境や子どもたちの課題に合わせた助成事業を継続すると同時に、その他の収入源の割合を高めていく必要性があると考え、認定NPO法人取得や岡山県初のグッドガバナンス認証マーク取得により寄付者の方にも安心して応援いただける仕組みづくりに取り組んでいます。
当事者家族は医療費の負担もあるため受益者負担が難しい
小児がんや心臓病などの慢性疾病を抱える子どもたちは、長期の入院治療や手術、退院後も定期的な通院や検査入院など医療費の負担が大きくなっています。また、小学生と中学生の子どもたちは義務教育であり、入院治療中や自宅療養中でも、すべての子どもたちが無償で平等に学ぶ権利が保障されるべきだと考えています。
ここで全国にどれくらい病気療養している子どもたちがいるのか、病院内の学級「院内学級」の設置率に関するデータをご紹介したいと思います。
全国に病気やケガを理由に30日以上の長期欠席をしている児童生徒は約4.6万人、岡山県内には小学生から高校生まで約1,000人が対象であるというデータがあります。
入院中の学習や交流を補うために「院内学級」(病院内の学級)が設置されていますが、岡山県内には7施設12学級となっており、全国では小児病棟がある病院の約30%の設置率となっています。
入院中の子どもたちが院内学級に通うためには、病院内に院内学級が設置されていることはもちろん、ある程度の長期入院が必要と認められ、原籍校(地元の学校)から院内学級が設置されている小中学校への転校手続きが必要となります。
「院内学級が設置されていない病院に入院している児童生徒の学習保障」
「短期入院や検査入院のため院内学級に転校していない児童生徒の学習保障」
テスト勉強や受験のための学習であればYouTube動画やオンライン家庭教師などを利用することで補うことができますが、私たちポケットサポートが支援しているのは「同じように病気療養経験のある当事者」の立場から、「入院中や将来への不安」「退院後の友人関係への悩み」など、家族に迷惑や心配をかけたくないと懸命に頑張っている一人ひとりの子どもたちに寄り添う活動です。
「病気を理由に諦めてほしくない」
「私は病気だから…」「今は入院中だから…」という理由で子どもらしく遊ぶこと、友達と一緒に旅行に行ったり、運動会や学習発表会・卒業式に参加することを諦めてほしくないのです。
誰もが病気になる可能性があります。だからこそ、私たちポケットサポートのような支援活動が全国に広がり、行政サービスや制度として整備されるように、一人で多くの皆さんの応援が必要なのです。
相談件数や利用者数に比例した補助金ではない
ポケットサポートでは2018年度より「岡山市小児慢性特定疾病児童等相互交流支援業務」を岡山市より受託して、長期に病気療養する子どもたち同士の相互交流や、大学生ボランティアとの交流、学習支援やピアサポート相談を通じて、情報交換やコミュニケーション能力の向上により健全育成および自立促進を図ることを目的として活動を続けています。
支援拠点の開放や入院病棟とオンラインZoomでつないでコミュニケーションやボードゲーム、学習支援などを年間約100回開催しています。2018年度から2020年までの利用者実績は下表をご覧ください。
※2020年度は新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言等の影響もあり、医療従事者の負担軽減や面会制限のため例年より開催日数が減少しています。また、2020年度からはiPadを各医療機関に貸し出して、オンラインでの支援活動を行っています。
岡山市の補助金だけでは岡山県内すべての子どもたちに支援を届けることができない
2020年度の利用者実績から岡山市内の利用者は約60%となり、残りの40%は倉敷市、赤磐市、玉野市など県内の複数の市町から岡山市内の総合病院で入院治療を続けている子どもたちです。
現在は岡山市内の病院に入院中ということで岡山市の補助金内で支援活動を実施していますが、退院後に地元の学校へ復学する際の悩み相談や、テスト勉強の遅れを補う学習支援などは、支援が充実しているとは言えない状況です。
また、運動会や卒業式の中継などは開催日の数週間前に連絡が入り、ポケットサポートにて支援することが決定するため助成金や補助金での申請や予測が難しく、学習発表会や卒業式などの中継をするための機材レンタル費用や人件費、モバイルWi-Fi通信費、会場までの交通費も皆様からの寄付金を活用して、子どもたちの人生の1ページに残る思い出作りに貢献したいと考えています。
ここまで「活動資金として寄付金による収入が必要不可欠な理由」を3つに分けてご説明いたしました。私たちの力不足、説明不足な点もあり、支援者の皆様にしっかりと情報提供ができていなかったと反省しております。
安定して支援活動を継続するために必要なこと
ここからは岡山県内で病気を抱えるすべての子どもたちに支援を届けるために、私たちポケットサポートが実施すべき行動(アクションプラン)を大きく2つに分けてご説明します。
岡山市だけでなく岡山県からの委託事業を受託する
岡山市で委託事業として制度化できたように岡山県としても、病気を抱える子どもたちの相互交流や学習支援の必要性を理解していただき、制度化することで毎年約40%の岡山市外の子どもたちにも支援をしっかりと届けることができるようになります。
岡山県からの委託事業を受託することで、岡山市保健所や岡山県教育委員会だけでなく、岡山県内の様々な市町村の保健所や教育委員会とも連携して、当事者家族の個別性の高い相談に対して過去事例の情報提供や、課題解決のヒントにつながるアドバイスができればと思っています。
さらに、岡山県内に7施設12学級ある院内学級とも連携してオンライン授業のサポートや、同世代との交流、社会科見学や学校行事等のオンライン配信サポートなど支援拡充につなげたいです。
委託事業を制度化して受託することは簡単ではありませんが、一人で多くの病気を抱える子どもたちが将来に希望をもって自分らしく笑顔で暮らせるように、そして、病気を理由に受験や将来の夢を諦めることがないようにするために、実現にむけて取り組んでいきたいと思います。
活動の安定化や事業継続のために応援団(支援者)を増やす
岡山県での制度化を進めるためにも、支援活動を寄付金で安定的に継続するするためにも、ポケットサポート応援団(支援者)を増やしていく必要性を感じています。病気を抱える子どもたちの支援活動は医療従事者・学校関係者・保健所・教育委員会・地域支援団体など多職種のご協力が必要不可欠です。
そのためにも、私たち「ポケットサポート」という団体名の認知度を広めていくと同時に、病気を抱える子どもたちの現状や支援課題を知っていただくこと、子どもたちの応援団としてご協力いただくチームのメンバーになっていただける方を増やしていく必要があります。
医師や看護師の方から「入院中の交流支援や不安軽減を相談できる団体」、学校現場の先生から「復学支援やオンライン授業サポートを依頼できる団体」として幅広く認知いただき、ひとつ一つの事例を丁寧に積み上げながらデータベースに蓄積することで、岡山県内の様々な地域でも応用できるようにしたいと考えています。
ホームページやSNSを通じて県外からの相談も増えてきており、大阪や東京にある当団体と同じように病気を抱える子どもたちの支援活動を行う団体と連携する機会も増えています。そして、岡山県外の方から毎月500円から寄付できる「学び応援サポーター」をご登録いただいたり、現物寄付をいただくことも増えてきました。定期的に活動報告やイベント開催情報などをお送りするメールマガジンの登録者は1,200名を突破しています。(2022年2月末現在)
今後もポケットサポートでは病気を抱える子どもたちや保護者からの声はもちろん、支援者の皆様からの貴重なご意見を参考にしながら事業改善に取り組んでまいります。最後までご覧いただき、本当にありがとうございました。