※この記事は代表理事の三好祐也が対談のやりとりや対談ノートをもとに書いています。
詳細や細かなニュアンスを知りたい方は、対談の動画アーカイブをご視聴ください。
日本の小児慢性疾病の子どもたちはもとより、小児がんの子どもの支援事業の中でこの人を知らない人はいないだろうと思われる人物、楠木重範先生。
2021年7月にチャイルド・ケモ・ハウスの代表を退任され、現在は小児在宅医療に小児科医として携わる傍ら、全ての子ども・若者が自分の人生を肯定できる社会を創るため「TEAM NEXT GOAL」を立ち上げ活動していらっしゃいます。
「TEAM NEXT GOAL」
楠木先生は、チャイルド・ケモ・ハウスの前身である「夢の病院をつくろうPROJECT」の頃からの憧れの存在。ポケットサポートの支援活動がまだボランティア団体だった頃に、小児がん学会でお会いして、先生の講演を聞いた後にドキドキしながら話しかけに行ったことを鮮明に覚えています。
現在では小児慢性疾病の子どもたちを支える立場同士として、連絡を取り合う間柄です。
(あの頃から考えると、こんな関係になれるなんて感慨深い。)
入院中の子どもの学習支援~理想と現実~
そんな憧れの楠木先生から、NEXTGOALのYouTubeチャンネルで生配信する対談の依頼がありました。
タイトルは「入院中の子どもの学習支援~理想と現実~」
一見して日和ってしまいそうなお題をいただき、当日までメッセージでやりとりをしながら、ポケットサポートで行っている活動から、自分の経験、院内学級の卒業生たちの話などをまとめたノートを携えいざ、本番。
「入院中の子ども」や「病気の子ども」という言葉はイメージが広域になるため、前段として
「院内学級へ通っているような、小児がんや心疾患など、退院後には地元の通常の学校や支援学校の病弱部へ通う、高校進学や大学進学などが想定されるようなお子さんたちのお話」と楠木先生と定義付けさせていただきました。
テーマ「学習意欲と社会性がある子どもであれば、ネット環境さえあれば解決するのではないか?」
この問いから始まった対談ですが、この観点から見ればコロナ禍となり「遠隔授業」が市民権を得て、入院中の子どもも所属している学校の授業を受けやすい体制が整ってきました。
ポケットサポートでの学習支援(復学支援含む)はコロナ禍の現在、以下の2つが中心
(もちろん、他の事業も様々ありますよ)
・ICTを使った個別の学習支援や交流支援(約6年前から)
・学校と病室や自宅などを結ぶ「遠隔授業」や学校行事の中継の際の学校や医療機関へのサポート
入院中の子どもたちに遠隔授業を!と訴えてきた者として、ある意味コロナ禍が追い風となったと言っても良いでしょう。ただ・・解決すると思っていたことがそうではありませんでした。
◆病院側の課題◆
病院(医療機関)という場所では、多くの患者さんがいることから、感染症対策やプライバシーへの配慮・対策といったことが課題としてあります。
特に大部屋と呼ばれる複数の患者さんが同室で過ごす環境では、そもそも声を出してのやり取りが憚られるだけでなく、間接的に他の患者さんの情報が漏れ伝われることや、「医療者や実習の学生が、学校の人に見られると困る。」「薬の名前が映ってしまう(医療情報の漏洩)」といったこともあります。さらに意外と知られていないのが、病院というのは構造上Wi-Fi(無線のインターネット)がつながりにくい病室があったり、Wi-Fiそのものが禁止されている病院がまだ存在するということ。
このような様々な課題をクリアして、病院側が「〇〇さん、病室で遠隔授業受けて良いですよ!」となれば解決します。(仮想背景使ったり、イヤホンしたり、ネット環境が良くて、遠隔授業を受けることそのものに理解があれば、まあまあの場合OKになるような気もするんですが。)
◆学校側の課題◆
合理的配慮の下、相当の期間学校を欠席すると認められる児童生徒のために遠隔授業(同時双方向型授業配信)の扱いが文部科学省から出ています。
小・中学校等における病気療養児に対する同時双方向型授業配信を 行った場合の指導要録上の出欠の取扱い等について(通知)
授業に参加するという事は、リアクションがあるという事が基本的に前提とされています。これがいわゆる「同時双方向型」というもの。病院内では処置や本人の体調等のためにカメラが一時的にOFFになっていても、以下のように応答ができていれば
〇〇さん、聞こえますか?
はい!きこえます。
同時双方向性が保てているとみなし、正式な授業を進めることができます。
ただ、現場では大人数の児童・生徒に対して授業を行っているため、授業中にネットのトラブルが起こった際に授業を中断しないといけない、カメラを移動させたいときにサポートしてくれる人がいるか等ということが課題として出てくることがあります。担任の先生や周囲の先生が、このような機材を使い慣れていない場合にサポートが必要となってきます。この辺りは、授業と治療のスケジュール(受けられる授業)を調整したり、機材を1つの教室に固定するなどすれば解決が図れることがあります。
そして、大きな壁となるのが「この子」に向けた形で遠隔授業を行うことを学校側が了承し、クラスの人たちが認知しているかどうか。ここについては、校長先生の判断と決裁が大きく関わってくるところ。遠隔授業が当たり前となった今、スムーズに実施できている学校はあるので、多くの学校でもそうなっていることを願っています。
◆本人の課題◆
先のテーマ「学習意欲と社会性がある子ども」であったとしても、自分の病気や治療についてどこまでオープンにしているかでも状況は変わってくることがあります。「病院に入院にしているから」という理由で遠隔授業を受けたいという場合には、当たり前ですが、事情を学校側に伝える必要があります。
中学生以上で学校の先生とやり取りが直接できるのであれば「今日は治療があるので〇時~〇時は授業に出られません」「調子が悪くなったら画面を消すことがあります」などの連絡調整を、自分や保護者ができると(社会性というところに一部含まれる所もありますが。)良いです。
何よりこれらの課題は、病気療養中の子どもに全ての負担をかぶせてはいけないわけです。
病院側も学校側も「完全に(課題を解決)できないから、(遠隔授業は)全くしません」という認識では進みませんし、子ども自身も「学校の授業が受けたい、そのためにこのくらいはできる」といった意思表示が必要となります。
遠隔授業について、楠木先生の感動した事例もお話していただけました(これは、動画を見てね!)
この後は当事者でもある、2人の入院中のお話から、今入院している子どもたちのお話、病院の中のにある学校「院内学級」話などをしました。
続きは「NEXT GOAL(前チャイルド・ケモ・ハウス代表)楠木先生と対談②」で!
このお話の詳しい内容はこちらの動画をご覧ください