院内学級の子どもたちが創作する全国院内学級絵画展覧会

コラム

院内学級とは、病院内に場所を借りて設置してある、病気やケガによって入院した子どもたちを対象にした学校(学級)の俗称です。入院中でも学び続ける機会を保障する重要な場所ですが、院内学級の役割はそれにとどまりません。闘病の不安、入院中の寂しさを抱える子どもたちを精神的にも支えていく役割も担っているのです。
そんな子どもたちに向けて、院内学級の子どもたちだけが参加できる「全国院内学級絵画展覧会」というイベントが川崎医科大学小児科学教室と川崎医療福祉大学医療情報学科の主催でおこなわれています。このイベントは、入院中の子どもたちにさまざまな意義をもたらしています。

本記事では、この「全国院内学級絵画展覧会」や創作活動が子どもたちに与える効果などを深掘りしていきますので、ぜひ最後までご覧ください。

院内学級とは

院内学級とは、病院内に設置されている学校です。入院中の子どもたちが、一般的な学校と同じように勉強できる場所として設置されています。

特に、長期入院が必要な子どもたちが学業を続けるためには、院内学級の存在が欠かせません。院内学級は、日本全国の多くの病院で設置されており、入院中の子どもたちの教育を保障してくれる大切な居場所です。

創作活動が治療中の子どもたちに与える効果

創作活動は、入院中の子どもたちにもさまざまな効果を与えると言われています。

たとえば、

  • 夢中になれることで病気の自分を忘れられる
  • 子どもらしい自由な発想が生まれる

など。それぞれの効果を詳しく解説します。

夢中になれることで病気の自分を忘れられる

創作活動や音楽鑑賞などに夢中になることで、病気の自分を忘れて、目の前のことに集中できると言われています。何かに夢中になっている時間は、治療の苦痛や入院生活のストレスを軽減しやすいからです。

実際に、入院中の子どもたちの精神面のサポートをしようと、アート経験を届けようと活動している団体はいくつもあります。また、ある研究では、深い悲しみを体験した成人が、悲しみから回復する過程で創作・表現活動を行い、心を癒していたという結果が出ています。この結果より、創作・表現活動には心を癒す効果があることが分かりますよね。

したがって、入院中の子どもたちにとっても、創作・表現活動は、ストレス軽減に役立つでしょう。

参考サイト:深い悲しみからの回復過程における創作活動の効果に関する研究ー池田千登勢

子どもらしい自由な発想が生まれる

創作活動は、子どもたちが自由な発想で自分の世界を表現したり、普段言葉では言い表せないことを表現できる1つの手段です。創作活動は、「病院の中」「病気の自分」といった活動に制限がある環境のなかでも、子どもたちの持つ感性や想像力を存分に発揮できます。そのため、創作活動は、自己表現をする活動としてとても大切なポジションです。

欧米ではアートが「処方」として扱われる

欧米では、アートなどの創作活動が、入院中の患者への「処方」の一環として取り入れられています。アートが持つ癒し効果を活用して、患者の心理的な負担を軽減。イギリスでは、アートが医療に貢献するという認識が政府レベルでされており、あらゆるエビデンスをもとに、アートが健康をサポートするといった内容の報告書を発表しています。

参考サイト:ARTnews「欧米で浸透しつつある「クリエイティブ・ヘルス」とは? 広がるアーティストの活躍の場【医療とアートの最前線 Vol.3】」

全国院内学級絵画展覧会とは

全国院内学級絵画展覧会とは、院内学級に通う子どもたちが参加できる絵画展覧会です。入院中の子どもたちの創造力を発揮する場として、また院内学級の子どもたちの情緒面の改善や自信の回復をはかるために毎年開催されており、今年度で第26回をむかえました。子どもたちは、自分の作品を発表することで、自分自身の成長を感じるとともに、他の参加者や地域社会と交流する機会を得られます。

主催者

主催者は、川崎医科大学小児科学教室と川崎医療福祉大学医療情報学科です。

全国院内学級絵画展覧会の担当は医療情報学科 教授 渡邊佳代先生と助教 樫村菜穂先生です。

応募条件など

・参加資格:院内学級に在籍している小・中の子ども。

・参加条件:作品をホームページや展示場で紹介することに同意する子ども。

応募する作品について

応募できる作品は、パソコンを用いた作品と手描き部門の2つです。それぞれの部門には、一人一作品というルールがありますが、両方の部門に応募することはできます。テーマの指定はなく、自由な発想で制作可能です。過去に発表したものや、他の人の作品の類似品などは対象外となっています。提出方法にも指定があるので、詳しくは、展覧会作品参加募集要項をご覧ください。

一般向けに展覧会も

全国院内学級絵画展覧会で募集された作品は、一般向けの展覧会で展示されます。場所は、主催の川崎医療福祉大学内。展覧会への入場は無料で、誰でも入れます。この展覧会を通して、院内学級の子どもたちと地域社会との交流が生まれ、子どもたちの作品を通して、入院中の生活や葛藤・努力などを知ってもらう機会となるでしょう。展覧会をきっかけに、子どもたちの存在が社会的に認識されることは、子どもたちにとっても保護者にとっても、大きな励みとなるはずです。

全国院内学級絵画展覧会に参加することで……

全国院内学級絵画展覧会に参加することで、子どもたちには以下のようなメリットがあると考えられます。

  • 子どもたちの才能を発揮できる
  • 地域社会と交流できる
  • 自らの成長を実感し自信をつけられる
  • 子どもたちに対する社会的な認識を高める

それぞれのメリットを詳しく解説します。

子どもたちの才能を発揮できる

子どもたちが絵画展覧会に参加することで、子どもたちの才能を十分に発揮できます。創作活動を通じて、自分の可能性を再確認し、新たな目標を見つけられるでしょう。

地域社会と交流できる

先述した通り、院内学級の子どもたちは展覧会を通して、地域社会と交流する機会を得られます。普段「病院」という閉ざされた環境で過ごさざるを得ない子どもたちは、地域の人々と交流する機会を持つことで、新しい価値観や刺激を得られるでしょう。入院中の子どもたちにとっては、このような経験は非常に貴重です。さらに、社会とのつながりを感じられることで、精神的な支えにもなるでしょう。

自らの成長を実感し自信をつけられる

自分の作品を展示し評価されるという経験は、入院中の子どもたちが自己成長を実感する機会となるでしょう。賞を受け取ることで自信を深められ、治療に向かう意欲も高まるかもしれません。ポジティブな気持ちで治療に取り組めるようになる可能性もあるでしょう。

子どもたちに対する社会的な認識を高める

絵画展覧会の作品を通して、社会全体が病気療養中の子どもたちの存在を認識するきっかけとなるでしょう。病気と闘う子どもたちの支援を広めるきっかけとなる可能性も高まると言えます。

まとめ

創作・表現活動は、子どもたちの精神面に大きな影響を与える可能性があることが分かりました。もちろん、精神面は身体面へも少なからず影響を与えます。そのため、創作・表現活動の「処方」としての役割も、今後ますます注目されていくでしょう。

全国院内学級絵画展覧会では、創作・表現活動にとどまらず、社会的にも大きな意義があることも分かりました。日本人の気質的に、あまり知らなかったり、理解が難しかったりする物事に関しては消極的になりがちです。

しかし、病気の子どもたちが、少しでも心地よい社会で、手厚い支援を受けながら過ごすためには、社会の理解が必要不可欠といっても過言ではありません。絵画展覧会を通して、院内学級やそこで頑張っている子どもたちのことを、ダイレクトに感じて知ってもらうことで、一歩ずつではありますが、病気を抱える子どもたちが安心して過ごせる社会に近づいていくでしょう。

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