ポケットサポートのNPO法人設立当初から、寄付をくださっている秋山さんにお話を伺いました。秋山さんとは、代表の三好が当時大学1年生でボランティアをしている時に出会い、娘さん(次女)が小児がんで長期入院を余儀なくされました。その頃から15年来のお付き合いで、懐かしい話から現在の子どもたちや若者たちへの思いについてたくさんお話いただきました。
大きな写真アルバムの中にある思い出の1枚
大きなアルバムを2冊と本を1冊抱えてきてくださった、秋山さん。
せっかくだから、こういう懐かしいのがあったら良いかなと思って。
本当に久しぶりに引っ張り出してきたよ。
懐かしいですね〜僕が茶髪でロン毛で、いろんな格好してる。。。
今思うと本当にすごいな~。
今、仕事でしんどいときや、人生とか生活に疲れてきたときに、この写真をみて、ポケットサポートのことを思い出して頑張ろうっていう気持ちになるの。
手帳から取り出してくれたのは、約15年前に大学病院の小児科でとった娘さんや三好が写っている小さく切り取られた写真でした。
ここにはたくさんの歴史があるんだよね。
みんな、その子、その子が主役だった。
入院中の子どもや家族の抱えている思い
今は高齢者のグループホームの管理人をされている秋山さん。
あの頃の経験が今も支えているよ。
スタッフや上司に「秋山さんは本当にいろんなことに気づきすぎる」と言われるけど、私にとっての長所であり、逆に仕事をする上で足を引っ張ることもあるけど。
当時、娘さんの入院が始まったときは、大学病院の新しい病棟ができた頃で、まだ引越しの真っ最中でした。秋山さんの写真アルバムは、古い病棟の写真からはじまって、次のページには新しい壁紙の綺麗な、何もない病棟が広がっていました。
本当に何もなくて、それでも子どもたちはイラスト書いたり、本読んだり、ゲームしながらとにかく“ひま”な時間を潰してたのよね。
それって今も変わらないのかな?
プレイルーム(入院中の子どもたちが集まって遊ぶ部屋)には最初引っ越したばかりは、物が少ないところからでしたね。
今は保育士さんもいたり、おもちゃや本も増えてきましたね。
いろんな病院にも入って見てる中で、何もないプレイルームや、院内学級が設置されてない病院もあるので、そういう子どもたちはとにかく“ひま”で病室でゲームとかよくしてる印象です。
小児科に移ってきたときに、院内学級があったのが良かった。
結構、周りのお子さんやお母さんは、入級(転校)するのをしぶってる人もいたけど、私はすぐに決めたもんね。
娘さん、院内学級が大好きでしたからね。
三好くんもよくわかってると思うけど、病院で“生活”してるんだから。
ここが“生活”の場。ご飯も食べるし、シャワーも浴びるし、寝るし起きるし、院内学級があったら学校へも行くし。
学校に行くから準備するとか、宿題があるとか。あれがいいのよ。
娘さんは本当に明るくて前向きに、物怖じせずに誰にでも話しかけて、ときには励ましてくれてたけど、どういう感じで接していらっしゃったんですか?
うちの子には、とにかく『否定せず』に関わってたのよ。
あの子が言うことには、「わかった、じゃあやってみようか」
どこか行きたいといえば「じゃあ、行こうか」
できなかったら「それをするためにはどうしようか。」
病院の中でも、とにかく否定せずに成功体験を積ませるようにしてきたの。
だから、他の子どもが「どうしよう〜」ってウジウジしてるときに、うちの子は「やってみたらええんやん!」って本気で言ってたよね。
それって大切ですよね。
僕も命の危険が伴わないことなら、挑戦していくべきだと思っています。
病院の中は制限も多いですが、できることはきっとあるから、「どうしたらできるだろう」って建設的に考えていくことは大切ですよね。
そう。逆に他のお母さん方からは同じ部屋でたくさん会話聞かれてるから「どうして怒らないの?」「腹が立たないの?」って言われることもあったけど、腹は立たないのよ。
だって我が子だもん。やりたいってことを叶えてあげるのが親だから。
同じ部屋に入院してる子同士もすごく仲良かったですよね。
4人部屋だと、ベッドの間のカーテンは締め切られていることが多いけど、あの部屋は全てオープンでみんなが仲良く過ごしていたし、テーブル出してトランプしたり、キャッキャ言いながら笑い声や、話し声が聞こえていました。
当時、高校生の子がいて、その子は小学校も中学校も、病気のことがあって修学旅行に行けなかったみたいで。いつもウジウジしてて。
「私なんて病気だから・・」って。思春期の女の子たちはみんな口を揃えて「どうしよう・・」って言ってたけど、うちの子が「やってみたらええやん!」って一言いうの。
そういう子たちも、うちの子達のグループに入ってくると、治療にも前向きになっていったのよ。
その高校生の子も毎日のように夜ご飯終わってから消灯時間までトランプやUNOしてると、「修学旅行に行ったみたい〜」ってそんな言葉まで出るようになって。彼女たちにとってはここが「居場所」だったんだと思うのね。
本当にそうですよね。病院に入退院してる子たちにとって、病室や院内学級はみんなの「居場所」になることはありますよね。
僕も入院していた頃は、同室の子たちは関わりの中で自然とカーテンが開くようになっていった経験があるし。同じようにオープンな関係ながらも相手のことを思いやるそんな病室でした。ある意味で当時は、病院にいることが楽しかった。
そうよね。あと、思春期の子たちもたくさん見てきたけど、あの子たちも小さい頃から病気で、それで岡大病院に行ったりきたりしながら、成人していってるのよね。
前編まとめ(後編につづく)
ポケットサポート代表の三好と15年来の知り合いで、NPO法人設立当初から応援してくださっている秋山さんにインタビューさせていただきました。
長期入院になると病室で過ごすことが多くなり、お母さんとお子さんが無口になったり、ケンカしたりする様子を見ることもありますが、秋山さんはとにかく『否定せず』に関わっていたと語ってくれました。
他のお母さんから「どうして怒らないの?」「腹が立たないの?」って言われることもあったけど、我が子が【やりたい】ってことを叶えてあげるのが親だからという言葉に、母親としての決意や力強さを感じました。
インタビュー後編では、秋山さんご家族のきょうだいの思い、これからの未来についてお話をしました。ぜひ、後編もご覧ください。